変形性股関節症・・・。書いて字のごとく股関節が変形した状態の事で、女性にとても多い疾患です。
僕たちの間では略して「変股(へんこ)」と言われています。
なぜ女性に多いのかというと、臼蓋形成不全(発育性股関節形成不全)という遺伝的な要因や、胎児期の姿勢(逆子)などが原因で起こる疾患に続発して発症するケースが多いのですが、
その臼蓋形成不全は、男女比1:5~9と女性に多いことから、変股も必然的に女性が多くなってしまいます。
この疾患では、下図右のように正常な股関節に比べて、大腿骨の受け皿である臼蓋の凹みが浅くく、大腿骨がきっちりはまり込む事ができません。
つまり股関節のかみ合わせが悪いため、徐々に関節軟骨がすり減り、骨の変形をきたします。
50才前後から痛みなど問題が顕在化する方が多いのですが、これは閉経後にカルシウム代謝がガクンと変わる事が関係しているからです。
痛みとしては、股関節の奥・そけい部だけでなく、太もも・膝・腰にも出てくることが多いです。これは股関節の可動制限があるため他でかばっているため起こります。
整形外科でレントゲンを撮ってもらうと、「手術して人工関節にした方がいいですね。」という話になる事もしばしば・・・。
僕たちのように手で検査した場合でも、
✔患側に体重を乗せると痛い
✔股関節を自力で動かせる範囲がごくわずかで、痛みも強い。
✔仰向けに寝ると膝は浮き、強い痛みがでる。
✔股関節を動かすとコリコリ音がすると共に、強い痛みがでる。(これは股関節の関節面がつぶれているサインです。)
このような状態だと「これは手術を勧められても仕方ないな・・・。」という感じです。手技や運動療法でも、股関節の動きを取り戻せるかは難しい状態なのです。
「いきなり手術はちょっと・・・」「できればしたくない!」という方がもちろん大半ですがその理由のとして、手術するともっと悪くなるんじゃないか?予後はいいのか?また普通に生活できるのか?と心配している方が多いです。
実際、今と昔では手術法や人工関節の質が変わっています。
以前は・・・.
■人工関節の耐久性が10~20年とされていた。
■人工関節の耐久性と平均的な寿命から逆算して、65才くらいまでが手術のし時とされていた。
■骨粗しょう症が進んでいると手術の適応外とされていた。
■安静にしていないといけない期間が長いので、予後が悪い。
しかし今では・・・
■手術の負担が少ない。20年前は25㎝ほど切開しなければいけなかったのが、今では7㎝程度で済む。そのため術後のリハビリも翌日から始めることができる。
■人工関節の耐久性が大きく向上した。20年前は10~15年程度と言われていたが、今では20年~30年もつ。
*耐久年限に開きがあるのは、その人の活動量によって使用頻度が変わるから。
■90才の方でも手術できる。
このように昔と今じゃ全く違いますし、予後も良い方が多いです。(術後のリハビリは少し大変かもしれませんが、3週間程度で退院できます。)
どうしても手術が嫌な方は、保存療法を選択します。
手技や運動療法で痛みの緩和はもちろん、できるだけ日常生活が楽に送れるよう施術していきます。
その場合のデメリットは、痛みが緩和しても股関節の機能は大きく損なわれる可能性が高いということです。
股関節のように大きな関節の動きを損なうと、「立ち上がる」「歩く」といった動作に必要な筋力がより大きくなります。
その時、そういった動作をこなすための筋力が足りなければ、将来的に車いすになるかも知れませんし、そこから寝たきりになるリスクもあります。
「とりあえず痛みが取れてきたら終わり。」ではなく可能な限り関節の働きを温存できるような治療が必要になります。
また急激に骨がつぶれていくタイプの変股もあります。そういった隠れたリスクは、レントゲンでないと分かりません。
保存療法を選択する場合も、定期的に整形外科でレントゲンを撮ってもらい経過を診た方がいいですよ。
次回は保存療法でどんな事をするのか簡単にご紹介しますね。